インデックス.jpg (933 バイト) はじめに(川上 貢)

 バイオメカニクス研究の目的は、身体運動のからくりを力学(物理)・数学・生理学・解剖学などを駆使して明らかにすることです。力学を駆使するということは、物理学の基礎学力が養われているということが必要条件のように思われます。 確かに、物理学の基礎学力があれば良いでしょうが、スポーツ実践者にとって基礎から物理学を学び理解する時間的余裕はありません。   物理学を理解するいちばんの早道は個々の現象に対し、自分で考え、自分で物理学にあてはめ、修練することです。   幸いスポーツの世界は、物理現象の宝庫です。

 また、数学は決して数字や記号を技術的に取り扱うところが本質ではなく、人間の思考活動を補佐することに目的があります。

 私が、スポーツ実践者をみていつも驚かされることは、動きを観る眼、躰で覚えた感性の鋭さです。  もし、それらを説明する表現法としての数学、物理をより理解し用いれば、さらなる研究の発展が望めるだろうし、もっと多くのスポーツバイオメカニクス研究者が生まれることでしょう。  

また・・・、よい動きを追及しているスポーツ実践者にとって、大きな手助けなることは間違いないでしょう!!。

   ところで、「いい動作(よい動き)」とは何でしょうか?

下記の2つの原則を知り、それを追及することが、その疑問を解決すると思われます。(バイオメカニクス観点から)


【@速度を生むための原則】

 スピードボールを投げるためには慣性モーメントの利用が必要である。慣性モーメント(I)とは、I=mr(部位の質量×回転半径の二乗)で定義される物理量で、回転運動の抵抗をあらわす。すなわち、慣性モーメントが大きいと回しにくいことを意味する。よってスピードボールを投げるには、慣性モーメントをタイミングよく順次小さくしていくことで角速度および線速度を加速することができる(角運動量保存の法則)。 

 すなわち、投球動作では投球方向へ強く蹴り、大きな並進運動量を生み出し、それを胴体に伝達し、胴の回旋(回しやすい)で回転運動に変換し、肩、肘、手首の順に回転軸をずらすことによって、自然に速度を増すことができる(二重振り子理論)。また前腕、手の末端部で速度を加速する場合、手掌屈より、回内動作を意識した方がより加速できる。これは、手掌屈を意識した動作より回内を意識した動作の方が回転半径をより短くでき、慣性モーメントを小さくし速度を出しやすいことによる。また、回内筋、尺側手根屈筋を協力筋として、これらの筋の伸張-収縮サイクルも利用でき、さらに加速すると考えられる。

 この動作はテニスのサーブ、バトミントンのスマッシュ、バレーのストレートスパイクなどにみられ、体温計(水銀)を振る動作に似ている。

【A力を生むための原則】

 力を生み出すためには筋力は不可欠であるが、人体の身体部分が関節で繋がった鎖、あるいはリンク系モデルと考えると、身体部分は常に回転運動である。すなわち、トルクを大きくすることが重要である。 トルクとは回転力ともいわれ、T=Fr(力×回転半径)で定義される物理量である。自分の筋力で相手に衝撃を与える格闘技では、どの関節角度でトルクが一番大きいかを知る必要がある。この時、筋生理学的に収縮性筋収縮が生体長で最大筋力を発生することも知っておきたい。また、ひとつの筋の筋力だけでなく、いくつかの筋を協力筋として利用することもより大きなトルクを発生させる要因のひとつである。

 相撲で「寄切り」という技がある。寄り切る前に相手が力を出せないようにするために相手脇を広げる「腕(かいな)を返す」という動作は、まさに上腕二頭筋と上腕筋の共同作業である。

     

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